[0160]半価幅とは
X線残留応力測定センターは、鋼やアルミなどの材料に対して、安価で短納期の応力測定サービスを提供しています。相談無料です。お気軽に電話かメールで。
「Full-Width at Half-Maximum(FWHM)」とは、回折強度曲線のピーク強度の半分の強度における回折強度曲線の幅を表す指標であり、単位は度で表されます。この指標は、転移密度、結晶粒サイズ、機器オフセットなどの要因に影響を受けます。
一般的に、転移密度が高くなるほど、結晶粒サイズが小さくなるほど、半価幅は大きくなります。
また、半価幅と硬さには相関関係があることが多いです。
半価幅で塑性変形の程度を推定することができます。したがって、あとどのくらいで破壊するかの予測も可能な場合があります。
半価幅の要因 半価幅の表すもの
X線プロファイルと半価幅の定義
半価幅と硬さの相関図
回折強度曲線(X線プロファイル)は何か?
当社で使用しているCrクロム管球のX線とフェライト鋼の場合で説明しましょう。
X線(Cr Kα線 λ=2.29Å)をフェライト鋼に照射すると特定の角度にX線強いところが現れます。
X線回折現象
これがX線の回折現象です。ブラッグの式で表すことができます。
ブラッグの式は
2dsinθ=nλ
X線回折ではn=1なので
2dsinθ=λ
dは、格子面間隔[Å]
θはX線入射角度[度]
λはX線の波長[Å]です。
フェライト鋼は、無応力時
d=1.17Å
θ=78.2度
λ=2.29Å
でこの式が成立します。
ちょっと待って、フェライトBCCの原子間は、2.866Åと気づいた方その通りです。
d=1.17Åは、211面です。
鋼(フェライト)の格子面 (211)
鋼(フェライト)の格子面 (211)
話は逸れましたが。この半価幅は、加工や熱処理で変化します。
塑性加工による半価幅の増加
格子面間隔が全く同じであれば、ピークに幅はありません。つまり半価幅は、格子面間隔のばらつきを表しています。
例えば、材料にせん断応力が加わり、一部が塑性域に入ると結晶が滑り出して転移が入り、格子面間隔が広いものと狭いものが混在して半価幅が増加します。下図参照
塑性変形と半価幅
また、ひずみとり焼鈍を行うと途端に小さくなります。
また、加工ひずみの限界をある程度予測することができます。例えば、当社の機器を使った測定では、一般的な軟鋼で無加工 2.5度 最大加工時、4度程度です。[0109]半価幅による加工ひずみの評価を参照ください。当然X線の入射角度によっても違うので使いこなすためには、それなりのノウハウが必要があります。
穴広げ試験や引張試験で破断まで試験を行なった後に応力を測定すると高い応力が測定されない場合があります。確かに破断時には、試験機より高い荷重が試験体に付加されているのですが、試験機から離れると応力が再配分されて圧縮になってしまうことがあります。試験後の応力で破断の危険度を評価するのは難しいです。しかしながら半価幅には、高い応力が付加された痕跡が残っています。半価幅によりキレツが発生するまでの余裕を推定することができます。
写真2 引張試験による破断
まとめ この材料(SM490)で転移が入っていない状態で半価幅2.5度であり転移が入ると約4.0度で破壊する。破壊時の半価幅は、引張試験でも穴広げ試験でも約4.0度。しかし、この半価幅測定は難易度が高いです。原理をよくわかっていないと測定ができません。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane/99/5/99_99_TETSU-2012-092/_pdf/-char/ja
関連ページ
<半価幅, {{転移密度,硬さ,結晶粒サイズ}>