[0194]計測会社から見たcosα法の特徴と普及(改訂版)

株式会社 X線残留応力測定センター 三島由久

 

 

2015年にX線応力測定の普及を目指して会社を設立しました。当社が採用したcosα法の特徴と普及について計測会社の視点から解説したいと思います。

 計測会社に依頼されるお客様が純粋に応力値を知りたいことは稀です。本来は、製品の寿命を予測したい、破壊や変形の原因を知りたい、つまり課題や問題の解決をしたくて、その指標として応力が使えないかと考えている場合がほとんどです。それに対して計測会社は、実際に応力を測定してお客様の仮説を検証するわけです。その際に重要なことは、以下の通りです。

 第1に物理的に測定可能なこと。対象物の決められた位置にX線を照射してその回折環をセンサーで捕捉できるのが第1条件です。できれば測定と設置が容易なこと。特に現場測定等では、多くの時間を設置に費やします。

 第2に精度維持が容易なこと。特に調整等をしなくても精度が保たれること。毎日装置の検査を行う計測会社にはありがたい特徴です。

 第3に測定のロバスト性。特に現場での測定は、測定範囲に対して正確に垂直または、一定の角度に設置する等が難しい場合があります。少しアライメントがずれただけで測定値が大きく変わるような神経質な機器や方式は採用が難しくなります。正確にアライメントが取れなくても値が大きく変わらないことが重要です。

 第4に経済的であること。機器費用が高く測定に長い時間が必要だと測定費用が高額になり、多くの需要が望めません。検査や計測の世界では販売価格より検査費用が高く検査を断念することがしばしばあります。

 第5に精度の評価ができること。高い精度があるに越したことはありませんが。高い精度で測定できない場合もあります。その場合は、お客様の仮説の検証や判断を評価するのに足りる精度があるかが重要になります。例えば製造条件Aと製品条件Bの優劣をつけたい場合には、大小関係が判別できればいいので、分解能がABの測定値差より小さければABの優劣をつけることが可能です。一方で精密部品の変形は、原因の推定のために数MPa以下の測定精度を要求される場合があります。このように測定値の誤差を評価して、精度要求に応えられるか、判断できるかが重要な要件になります。

 以上の観点から、cosα法の特徴を述べたいと思います。測定では、X線のプロファイルや回折環からの情報も得られますので併せて記述します。

 

 

2.cosα法の特徴 

cosα法を用いた機器は、単一入射、つまりある角度でX線を照射して、その回折環を二次元検出器で360度全周捕捉します。そのX線強度分布、言いかえるとX線プロファイルから応力と半価幅等を解析します。従来の機器に比べて小型軽量、さらに測定が高速になっています1)。ここでは現在標準となっているsin2ψ法機器との比較により、その特徴を示します。

 cosα法は単一入射であるため、入射角を変えるための機械装置が必要ありません。したがってsin2ψ法機器と比べて小型軽量な装置になっています。重量は測定の容易さを決める重要な要因です。あらかじめ定められた点の応力を測定する際には、測定対象か測定器を動かして測定位置を合わせます。特に測定対象が大きいか重い場合は、測定器の方を移動させます。測定器が軽いことは設置時間も含めた測定時間の短縮の意味で重要になります。

 さらに入射角度を変えて何度も測定する必要がないので測定が短時間で済みます。短時間ということは経済性の面でも有利です。一例として標準的な鋼の条件で測定時間15分が1.5分に短縮されています。

 


図1 sin2ψ法機器(左)とcosα法機器(右)

 

sin2ψ法のように入射角度を変えて同一位置にX線を照射するためには、機器(センサー)と照射面の距離を一定にしなくてはいけません。一方、単一入射で2次元センサーの機器では、センサーと対象物の距離の自由度が比較的大きく(±10mm以上)取れます。これは設置の自由度を増すことになります。

応力の不具合が発生するのは、応力集中部となる、コーナー部分、ネジ底等の場所です。それらの構造を測定する場合は、機器と対象物が干渉しないことが重要で、設置の自由度で測定可否が決まる場合が多くあります。

cosα法の計算処理は、円形2次元センサーの回転方向に500個のX線プロファイルを記録して、通常はそのうち約400個のX線プロファイルを使って応力等を計算します。たすき掛けに計算をするので安定した測定値が得られます。cosα法の応力計算は、αとα+180度に起こる対称性のある外乱に対して、この影響を相殺する効果があります。

 

σx:測定応力 ψ0:X線入射方向と試験片表面法線間のなす角 η:入射X線と回折面法線間のなす角 E:回折面のX線的弾性定数(縦弾性係数) ν:回折面のX線的弾性定数(ポアソン比) εα:-ηから時計回りにαの角度方向のひずみ


図2 計算の図解

 

複雑な形状の対象を測定する時に、特に現場の大きな対象物の測定面に対して機器のアライメントを精度よく設置することは難しい場合がありますが、そのような場合にもcosα法は測定精度を確保しやすい方法です。

応力測定には、組織の不均一、形状、原因不明の理由で不連続な値が出ることがありますが数百点の測定プロファイルの演算により、このような不連続な値の影響を軽減することができます。

また、測定自体に可動部が必要ないために、機械的なズレの発生がなく、測定値がずれにくい特徴があります。

 等方弾性体の材料であれば、入射角度も10−60度の範囲で、大きな誤差を含まない測定ができます。適切な入射角度が取れないコーナー部分の応力測定等にも有効です。

 


3 コーナー部分の応力測定

 

X線プロファイルから応力と半価幅を推定します。半価幅から結晶粒径や配向性に関する定性的な情報を得られる

ことはsin2ψ法と同じですが、2次元センサーで360度測定できるので360度の半価幅が計算されます。今後、360度の半価幅から様々な情報が明らかになっていくと推定さ

れます。特に、加工など方向性のある現象の解析に有効と考えます。

 一方でsin2ψ法はセンサーとX線発生源の位置関係が自由であるため、様々な金属や結晶性物質を測定できる汎用性があります。長年にわたり標準的な方法であったためデータの蓄積があります。

 

3特徴を活かした適用分野

3.1現場測定

 現場測定とは製造現場、工事現場、供用中の橋、船、構造物等で行う応力測定と定義します。現場測定は、現物を使用環境に近い状態で測定することを目的として、設計通りにできているかの確認、き裂発生箇所の応力状態の調査、実稼働状態での応力調査等の目的で行います。

 sin2ψ法の応力測定装置は二人で運ぶのがやっとの重量でした。X線の入射角度を精度よく変える機構には剛性が必要で、その部分が頑丈かつ重くなってしまいます。cosα法の測定器は、このような機械制御部分がなく。軽量なので取り扱いが簡単で一人でハンドリングができます。

 また、測定に関する可動部がないので、設置の際にセンサー部分の可動範囲を意識しなくてよい利点があります。特に現場での構造物測定の際に、sin2ψ法では、最大可動範囲を意識しないと可動部が対象物と干渉して測定できないことがあります。さらに、低消費電力でありバッテリーでの駆動が可能です。商用電源を引き回すことが費用的、時間的なロスを生む、供用中の橋、船等の現場では特に有効です。バッテリー式高速電解研磨装置と組み合わせて以前の数倍の測定が可能になります。

3.2.多点の測定 点から線測定、そして面分析マッピングへ

 これまでのお客様からの測定の要望は、点でした。溶接部1点、母材1点等です。しかしながら、溶接部の1点でサンプル毎に応力が変動した場合に、応力の勾配の大きい溶接部等では、応力分布が変化したのか、応力分布の形は変わらず、位置がずれたのか判断ができません。したがって応力勾配の大きな対象を測る時は多点で線状に測定する。または、面上に測定する(マッピングする)ことが必要です。さらに、応力測定では多くの場合、応力最大部分の測定が重要になります。最大応力部分の特定が難しい場合は、マッピングによる最大応力箇所の同定が必要です。

例えば、破壊の原因調査では、破壊する応力条件を知りたいと考えています。しかし、すでに破壊した場所は、破壊により応力が解放される場合があり、より破壊条件に近い場所をマッピングで探します。また、測定すべき場所を特定できない場合、全体の分布が予測できない場合も同様にマッピングが必要です。

 マッピングで測定したデータは、数値解析との組み合わせで有効性が増します。CAEにおいては、初期値としてマッピングのデータを使用します。有限要素法(FEM)では、初期値の他にも計算値と実測値を比較し計算精度を評価します。

 マッピングの際には、対象物か測定機器の小さな方を移動させます。したがって測定機器が小さいcosα法の機器は、より簡単にマッピングができることがありますcosα

法による測定の高速化により数千点に及ぶ測定解析が実用的な時間に収まるようになってきました。

 

 

 



4 溶接部の応力マッピング2)


3.3. 非破壊検査との組合せによる寿命予測精度向上

 新型コロナウィルスの影響で企業の業績が悪くなると、まず設備投資が延期されるでしょう。そうなると既存の設備をギリギリまで使い続けなくてはなりません。安全操業のためには非破壊検査でより詳細な情報が必要とされます。つまり、使い続けて本当に大丈夫なのか?との疑問への回答です。その場合には、正確な余寿命の推定が求められます。より詳細な検査や新しい情報が得られる検査計測を提案するのに適した時期と考えます。

 cosα法による応力測定と非破壊検査の手法との組み合わせに期待が持たれます。例えば、磁気探傷、浸透探傷で発見されたキレツの進展の予測を応力測定で精度アップさせます。

 また将来、半導体センサ&計算専用チップにより小型化された測定装置が開発されれば、ハンディタイプの蛍光X線分析装置程度に手軽な測定ができるようになるでしょう。簡単に持ち運びができるので、前述のキレツ周辺の応力測定や経年変化で腐食したタンクのショットピーニング残存圧縮応力測定等に有効だと思われます。

 

3.4 構造物の安全性評価

 地震や不同沈降による変形に伴う構造物健全性能評価にも、応力測定がより多く用いられることになるでしょう。現在でも鉄筋や鉄骨の応力測定に用いられています。3)

 測定できる応力値は、変形による応力、荷重、鋼材の残留応力が重畳したものであり、その中から評価すべき応力

をどのように抽出するのかが課題となります。鋼材の残留応力には、製造時に発生する残留応力が含まれており。それらは必ずしも一定ではありません。製造時の残留応力は測定時の工夫でうまく分離する必要があります。

また、問題になる構造物には、しばしば、鉄鋼材料SSSMSN材といった材料が採用されています。これらの材料は粗大結晶が発生している場合も多く、注意が必要です。

 安全性評価としては、弾性域の場合は、どの程度の応力が加わっているか、塑性域では転位密度の大きさを評価する必要があります。

3.5半価幅の情報による加工評価へ応用

 半価幅は、結晶粒径と転位密度の関数で、塑性加工と共に上昇して一定値で破壊が起こる場合があります。例えばある軟鋼は、当社の測定機器の場合、無応力状態において半価幅が2.5度程度です。引張試験でも曲げ試験でも荷重をかけると半価幅が上昇して4.0度程度でキレツが発生します。半価幅でどの程度塑性変形が進んでいるか、または、キレツ発生までの余裕はどのくらいあるかを推定できます。

 弾性域で応力評価、塑性域での半価幅による安全性評価の技術の確立と標準化に期待します。

 

4.測定の課題

4.1半世紀前からの基本的な課題

 応力測定には、その普及開始時から指摘されて残っている問題があり、これらを解決していくことが課題として挙げられます4)

1つに応力集中部分が測定できない問題があります。応力により不具合が発生する場所は、圧倒的に応力集中部の曲面や段付き部等です。溶接止端の母材側以外に平坦部分に応力集中することはほとんどありません。曲面や段付き部の測定は、平面を前提としたX線応力測定方法では測定誤差が発生します。このことは、50年前の日本材料学会の論文にも指摘されていますが、いまだ全てに解決策が示されていません。論文では、3次元曲面、切欠き底、隅部、曲率の大きい凸面 または凹面、小形リングの内面、ボルト等が指摘されています。他には応力集中を緩和するために面取されたコーナー部分や、複数面が交差する狭わい部等に応力集中が起こり、測定の必要性が発生します。

しかし、擬似的に平面とみなせるようにX線の照射径を絞る以外には、平面でない応力集中部の測定方法に関する情報がありません。照射径を絞ると測定時間が長くなり、照射径内の結晶粒が減少して応力値のばらつきが大きくなる問題が発生して、測定しない選択をする場合が多くあります。

学術的には、時間や費用のコストが高い高度な方法で問題が解決できたとしても、商業的には、ほとんどそのような解決方法が選択されないのです。測定会社の視点からは、平面並みの精度が保証できなくても誤差の見積ができる、あまり高価でない方法があれば、利用範囲が拡大すると考えています。

 2つ目に集合組織の応力測定での誤差の発生です。等方弾性体を仮定したcosα法で異方性を示す集合組織の結晶群を測定するわけですので、基本的に困難であるという考えもあります。しかし、検量線を用いる方法で解決できると考えています。入射角度を変えてsin2ψ線図を合成して、応力毎に検量線を引くことができれば、ある程度の誤差で数字が得られる可能性があります。問題は、真の応力を測定する別の方法が必要となることです。

3つ目は粗大結晶を有する材料を応力測定した場合の誤差の発生です。鋼の結晶粒の細粒化制御が鉄鋼会社で行われたのは1980年代からで、それ以前設計の鋼材には、しばしば粗大結晶がみられます。前述のSSSMSN材がそうですが。ステンレスも固溶化熱処理で粗大結晶の可能性が生じます。結晶の粗大化は、応力測定値の標準偏差を増大させ、場合によっては応力計算が不可になる場合もあります。対策としては、装置揺動法が提案されています。揺動法の弱点は、不要だった機械駆動装置が追加され、cos α法のメリットが相殺されることです。

 測定値のばらつきが発生して粗大結晶に弱いと言われているcosα法ですが、経験的に十分な測定点数を取れば、その平均値は熱処理前後での応力変化は捉えています、つまり、X線プロファイルに情報としては含まれていると考えられ、今後解析手法、測定方法の改良によりばらつきが低減できる可能性があります。

 

4.2 測定の標準化

私が身を置いていた鉄鋼業では、分析の標準化が進んでいました。各社が競って優れた成分の鋼を開発していましたが、分析方法がバラバラで成分の差が検出できなければ、優れた成分の意味がありません。そこで鉄鋼協会では各社が協力して分析方法の標準化が行われていました5)。つまり測定技術は標準化し、製造技術は差別化&権利化していたのです。

現在は、材料学会と、非破壊検査協会において、cosα法での基本的な測定方法の標準化がなされています。

今後は、鉄鋼業のように対象の測定値を一致させるための標準化を目指して、測定対象の鋼種別や形状別の標準化に取り組んでいきたいと考えています。学術的な意味での

厳密な測定値の一致は難しいので、工業的な互換性のある範囲での一致、例えば公差±10%以内程度を目指した標準化を行いたいと考えています。また 測定値の一致を目指した標準化では、測定精度に関わる工程一切を標準化の対象とする必要があります。項目例として 

·         測定前の前処理の標準化

·         測定位置の決定方法の標準化

·         精度の評価方法の標準化

·         非平面 応力集中箇所の測定方法の標準化

が挙げられます。

 

5.X線応力測定業界の発展のための提言

5.1多様な測定ニーズに応える測定ハードソフトが必要

   応力測定機器には、測定対象により高精度化、高速化、小型軽量化のニーズがあります。それらを1つの機器でまかなうことは難しく、機器のバリエーションが必要になります。具体的には、マッピング用の高速機器、現場測定用小型軽量器、ラボ用高精度機器。しかしながら応力測定業界はそれほど大きな市場でなく、装置開発に投入できるリソースにも限りがあります。したがって少ない開発費用で数多くのバリエーションを展開する必要があります。

   それゆえ少ないリソースでどのように測定器のバリエーションを増やしていくかを考えてみたいと思います。

   開発費の回収 X線による応力測定の市場は他の一般的な測定装置や分析機器のそれよりかなり小さく、1社で測定機器を全部開発して投資を回収するのは大変です。装置を丸ごと開発するのは高額な費用と長い期間が必要です。したがって装置も高価でバリエーションも少なくなります。

   現状は、大学の研究費で基本的な開発を行い製品化する。コストを下げるためにX線回折の分析装置のオプションとして応力装置がある等の方策で開発費を抑えています。それでも、1次元センサで装置を作っているメーカーでもソフトウェアの開発費の大きさを理由でに2次元センサーに参入できないこともあります。

また学会等でも新しい手法が提案されても採算が合わないため、解析ソフトウェア開発されて、既存の解析ソフトが新しい手法にアップグレードされることは、ありません。ほとんどが5−15年の装置の買い替え時にハードウェア毎買い換えることになるでしょう。

 

5.2手法や装置の開発のオープン化標準化

  オープン化機器の開発に期待します。つまり基本的な開発を1つの組織が行いそれを公開して、他の会社はそれを利用できようにします。それで他の会社は全部を開発せずに製品を作ることができます。コンピュータの世界では実現しています。

  IBM-PC以前のコンピュータは、各社が独自の仕様で機器を作っており周辺機器もそのメーカーから購入するしかありませんでした。値段も恐ろしく高いものでした。IBM-PCは装置の規格を決めてそれを公開しました。その仕様に沿っていればどのメーカーの機器でも互換性があります。

  幸い現在の測定機器は、ほぼwindowsベースで作られています。それでセンサーや電源等のX線応力測定で使用されるハードウェアはwindows上で操作するドライバーというソフトウェアがすでに準備されています。cosα法の装置は部品点数を少なくできる点オープン化に向いています。

  したがってOSであるwindowsやドライバーの上位で動くフレームウェア、ミドルウェアおよびアプリケーションでX線応力測定ソフトウェアの雛形を作ってそれを公開することでオープン化機器が実現します。X線応力測定の基本的なソフトウェアがカスタマイズできる状態で供給され他のベンダーが利用できることになります。

  2次元センサーのメーカーがwindowsのドライバーと一緒に自前の高速度または高精度センサーを販売することも可能ですし、解析を得意とする大学の先生がMATLAB等のアプリケーション上で新機能解析プログラムを開発して、利用者に提供することも可能になります。このように様々なニーズに対応できます。

  オープン化機器によってアイデアを容易に実現できる環境を作る。

    他研究分野からの参入障壁を下げて新しいアイディアを受け入れる。ことが重要だと考えます。

    応力計算の方法は、かなり前に開発された方法で最新の信号処理の技術により応力測定の分野が進歩することは容易に想像できます。

    X線応力測定の信号処理にデジタルフィルタ にするだけで性能を改善が認められると予想される。

    しかし現状では測定装置を購入して、測定対象物を集めて、その機器のデータフォーマットを解析して、アイディアを具現化したソフトウェアを組んで表示させることが必要でアイディアを実現するまでの障壁が高すぎます。

    数学科の研究者が応力測定の信号解析に興味を持って自分のアイディアを試してみたいと思う。既に測定された各種のデータと解析結果が準備されており、測定データは、アイディアを数式で表現したら解析装置に組み込める。そのようなオープンな開発環境が必要です。

    解析技術の研究者には十分な測定データが使用できる環境が揃っていることやセンサーの開発には、大量の他のセンサーのデータが準備されていることが重要です。

  実現はなかなか難しいと思います。既存のノウハウを持った会社がオープン化装置を開発するのは、ノウハウの公開が必要で民間会社では、社長の同意が得られにくいと思います。よって大学、公共機関等での開発が期待されます。また課題としては装置全体の性能や信頼性をどのように担保するかです。いますぐに答えが出るものではありませんが、他分野ではすでに実用化しており、それらを参考に進めていくことになると考えます。

 

 5.3 測定会社の役割

  測定会社の役割は、技術知識のトランスファーだと考えます。対象の技術としては、

①これまでのアカデミックの研究成果 

②ある業界での常識をほかの業界へ 

③応力に関する基本的な技術 

5.4 測定会社は何のために利用するのか

目的の実現

時間コストの削減

    自社で測定を行うか測定会社に依頼するかは、測定のノウハウを自社で持っているかどうかで決まります。

    ノウハウがない場合は、測定会社に依頼して、測定して対象測定のノウハウを吸収した上で内製化を検討します。

    ノウハウが無いのに高額な測定器を買うとどうなるか。比較的裕福な会社には、使われなくなった計測器が多く転がっている

    測定器自体は、簡単に設置してボタンを押せば何らかの数字はでてきます。

  しかしながらその数字で現象を説明することは困難な場合が多くあります。

  表面の応力には、製造時からの加工、熱処理の履歴が残っているわけです。

5.まとめ

  sin2ψ法、cos α法装置で様々な依頼品を測定してきた経験に基づきcos α法の特徴、特徴を生かした適用分野とその普及について解説しました。今後も小型軽量高速のcos α法の特徴を生かして様々な産業分野での問題解決に貢献していきたいと考えています。