[0222]【X線応力測定】測定から簡単に主応力を求める方法
読者ターゲット:
従来の方法で、主応力を求めたが何かおかしい。
数値計算と実測の擦り合わせをしたい。
1方向の応力値では、現象が理解できない。
関連ワード 主応力 応力解析 モールの応力円
モールの応力円による主応力解析=特徴(
応力とせん断応力の両方を使って精度がいい、
誤差があっても測定方向を増やすと誤差が低減される)
応力の測定は、1次元つまりある方向の応力ですが、主応力を求めるのは2次元解析になります。つまり次元が上がります。
次元が上がることにより、全方向の応力が推定でき、当然ながら直接測定できない方向の応力も推定できます。
[0173]測定できない方向の応力を推定する。モールの応力円
主応力の求め方にはいくつかの方法があります。3方向の応力値から主応力を求める方法が一般的です。
以下に例を示します。代表的な例ですが本質的には他の方法も同じだと思います。
従来法 は、数字だけで何を示しているのか理解できないのです。
σ0,σ45,σ90は、それぞれの方向で測定された応力を示します。
実際に計算してみるとわかりますが、測定値を使って主応力を推定する場合に、予想とは違った値が出ます。
特に測定対象に測定誤差や3軸の応力の発生が予想される場合に誤差が大きくなります。
つまり含まれる誤差により数値が影響を受けます。
当社が提案する。モールの応力円を用いた方法
特徴
せん断応力を利用する。応力測定時にせん断応力も計算されるcosαの特徴を利用。
視覚的にわかりやすい。
全方向の応力が視覚的に見える。
測定値の誤差の程度が視覚的に理解できる。
従来法 は、数字だけで何を示しているのか理解できない。
モールの応力円を用いた方法はわかりやすい。測定点(応力値、せん断応力値)をプロットして円を描くだけ。
測定点の位置とモールの応力円の位置関係から測定と主応力推定の誤差が視覚的に推定できます。
平面応力場では、0と180度 45と225度 90と270度は同じであるはずであるが、3軸応力場では違いが生じます。
このような違いも視覚的に捉える事ができる。さらにこれらを平均することによって3軸応力の誤差を軽減する事ができます。
解析のロバスト性
6-8方向の測定で1点の応力状態を決定する場合は、1,2方向の特異データがあっても影響が軽減されます。
モール応力円での主応力の求め方
X線をX方向に傾けて測定(σx,τxy)
X線をY方向に傾けて測定(σy,-τyx)
応力をX 軸、せん断応力をY軸にして(σx,τxy)、(σy,-τyx)をプロット
(σx,τxy)と(σy,-τyx)を通る円を作成
せん断応力がゼロになる。円とX軸と2の交点σ1,σ2がそれぞれ最大主応力、最小主応力となる。
3.応力をX 軸、せん断応力をY軸にして(σx,τxy)、(σy,-τyx)をプロット
4.(σx,τxy)と(σy,-τyx)を通る円を作成
5.せん断応力がゼロになる。円とX軸と2の交点σ1,σ2がそれぞれ最大主応力、最小主応力となる。
Q.なぜ主応力を使うのか?
A.主応力でない方向の応力を測定しても全体像がわからない。例 主応力がおよそ45度と 135度の場合
Q.なぜモールの応力円を使うのか?
A.完全に近い平面応力場であれば、他の方法も有効であるが。平面応力場でない場合は、モールの応力円以外では有効な主応力が求められない。
応力の状態が可視化される。平面応力場からのズレも可視化される。
モールの応力円での解析事例
複数の応力が重畳している場合
溶接以外の応力が小さい場合
最大主応力は、ほぼ溶接線直交方向 x方向
最小主応力は、ほぼ溶接線平行方向 y方向
溶接線近傍では、モール円が小さい。溶接線平行方向と直交方向応力が拮抗しており、せん断応力が比較的小さい。
溶接線から離れると、モール円が大きくなる。溶接線平行方向の応力がより大きく減衰して、せん断応力が比較的大きい。
測定不可の方向の応力を推定
実際に測定できるのは、−60°及び−120°です。
加工面は、右側がせん断面で左側が破断面になっています。
応力の測定結果と0度方向の推定結果です。
破断面では、せん断面に比べて圧縮応力が抜けています。せん断面では圧縮応力は抜けていませんが、せん断応力が加わっています。これは現象とよく一致しています。
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